溶剤系インクジェット出力機
家庭用インクジェット機は通常、紙をメディアとして印刷していますが、ビニール素材には残念ながら印刷を行うことはできません。インキが浸透せず浮いてしまう状態となります。溶剤系インクをもったインクジェット印刷機は直接PVC塩ビメディアにインキを載せることが可能です。印刷機にはヒーターも持ちあわせており、加工前の温度調整そして加工後の乾燥用ヒーターを通って巻き取られます。通常の塩ビメディアは1mの巾はあるので、印刷機もそれに併せて130cmや160cm巾等の対応機が多くなっています。
弊社商品の中ではビニール製カラーキーホルダーがこの印刷機で出力したもので、使用後の耐摩擦性も考慮し、ウェルダーにて印字面はビニールコートしております。
1.印刷機
機械背面にロール状塩ビメディアを載せ、前面にガイドに沿って引き出していきます。床に近い部分に巻取り部があります。白いメディアが見えますが、この下部の金属部分にプリヒーター(印刷前温度調整)と、ポストヒーター(印刷後乾燥ヒーター)が付いています。このヒーターのおかげて速乾し、巻取りが可能になります。
多くのインクジェット出力機はこのようにロール状で印刷を行うため、厚手の素材(メディア)には出力が難しくなります。このため多少生産の連続性は犠牲になりますが、フラットタイプの印刷機もあります。ちなみに弊社UVカラー印刷機はフラットタイプです。
溶剤系インクジェット出力機 | PVC素材に出力後透明ビニールコート |
2.インキと解像度
溶剤系インキと言っても家庭用インクジェットと特に名前が変わったものでもなく、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色にて出力しています。弊社インクジェット機は白を入れていませんが、透明素材に対してはカラー印刷後の白打ちや有色系素材に対しては白印刷後のカラー印刷等の対応も可能です。
解像度は通常720X720で出力しておりますが、あとパスという概念がこの印刷機にはあります。4パスや8パス、そして12パス等です。パスが多くなればなるほど、基本的にはきれいに印刷が行えますが、反対に速度が落ちていきます。
3.RIP(Raster Image Processor)
これも家庭用インクジェット機とは大きく異る点ですが、印刷工程としては通常Illustrator上でデータ作成し、それをインクジェット機に直接つながったパソコンに送ります。直接Illustratorから出力するのではなく、一旦RIPソフトに入れ込み、印刷の細かな設定を行うことになります。なぜこのようなソフトが必要かというと、例えば30mの長さのビニール素材に30mmX30mmの画像データを印刷する場合、パソコン上の一つのファイルの中に同じデータを大量!にコピーをしていかねばなりません。手間が必要であるのと同時に膨大なデータ量となり、ネットワーク機能を麻痺させる可能性すらあります。このためRIPに一つだけ送り、RIP上でこれを縦横コピー回数を入力すればいいというわけなのです。その他、先ほどのパスの設定や細かなCMYK色調整、ヒーター温度までもRIP上で行うことができます。
4.溶剤系インクジェット機とUV硬化型インクジェット機の比較
時々どちらで出力するのか?と尋ねられますが、弊社ではもう単純に商品によってこちら!のように決まった状態となっております。あとは特徴を表にします。
溶剤系インクジェット機 | UV硬化型インクジェット機 | |
発色 | 鮮やかなオレンジ・ピンク等蛍光系の色がくすむ | 問題なし |
黒 | 問題なし ※但し濃くし過ぎるとインキが浮いてしまう |
黒インキはUV硬化しにくいので 濃度に限界がある |
対応メディア | 塩ビ、PET等 | PP、シリコン以外殆どOK ※但し定着が弱い場合、前処理が必要 |
対応厚み | 1mm程度 | 10cm程度 |
メディア送り | ロール反で放置印刷可 | 平版なので一度終わると置き換え |
インキの定着 | 専用メディア以外では多少耐摩擦性が落ちる | 素材によって様々ですが、 ポリカ、PVC等は難なく定着する |
溶剤系インクジェット出力機は出始めの頃は選択肢もなく高価でしたが、今では本当に様々なメーカーから様々なサイズ、値段の商品が販売されており、どの商品を購入すれば最適か判断に迷うほどになりました。
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